精神科Q&A

【1437】55歳、統合失調症の従兄弟は自立できるか


Q:  55才の従兄弟のご相談を申し上げます。
従兄弟は定時制高校を出て19才ごろの仕事先で異常行動が発現し 精神分裂症 (統合失調症)と診断され そのご入院し退院後 数カ所の精神科にかかり現在に至っております。

 病状は時々幻聴、幻視 があり 病気の認識がなく薬も通院も止める発言があったがしばらくして 幻聴が強まり苦しくなって通院を訴え 再開しくすりも母親が飲ませる状態でした。 母親と従兄弟は統合失調症が発病してから長年常に一緒に同じ時間的、空間的に生活して来たためか精神的な絆が強く 二人で一人の状態が見受けられました。 考えかたや生活行動も母親と同じであり被害妄想も同じでだれかが来ると 物が無くなったと発言することも続いている 例えば 介護のヘルパーさんが シイタケを持って帰った 爪きりが無くなった 鋏が無くなった など親族の名前を上げて 物が無くなったと訴える状況が今も続いて 先日は家内には「あんたが来てアイロンが無くなった」と言ったそうです。 後日 部屋の片付けをすると、無くなった品々が出てくるのです。

 従兄弟は性格的にはやさしく 他人への気づかいもあるが自己防衛本能が強く出て強制されると感じると感情が昂り暴言や威圧的になる 傾向が見られます。父親が亡くなってからは 自分で決める気持ちが強まっているが後で判断が変わる事がしばしば有ります。対人関係は 病院や薬局でも 隣保の方とも話ができ 近くのマーケットへの買い物、近くの歯科へは一人で行き支払いも支障なく出来ていますが 銀行、郵便局の出金、納税や役所の手続きなどは付き添いが必要です 女性の裸の写真に強い興味があり 雑誌や通販の下着のカタログを側に置いてあり 女性の親族にも電話で性的な話をする事もありその話は嫌いだと言えば止めるそうです。 記憶力はよく特に数字や電話番号は良く覚えています TVは良く見る模様です。
生活での異常行動は 風呂に入らない 爪を切らない 小便をバケツにし放置する トイレの水がもったいないと言って流さない下着の着替えをしない 洗濯をしない 買って来た飲食物のびんや缶や器はそのまま放置 片付けず 掃除もしない 新聞は資源がなくなると困る理由で貯まる一方、お金の管理が出来なくお金は放置、タバコを吸って吸殻をためて「もったいない」と言う理由でため込んで もう一度吸うが 山盛りのまま放置する。 夜と昼が逆転した生活パターンのため夜中の2時ごろや明け方4時ごろに親族に電話を架けるが緊急事態でく夜中や明け方に電話をしないように説得すると 電話をしなくなった。 

昨年12月に母親が亡くなりました。それからは、従兄弟の目の前で服薬の準備をすれば服用しますが 電話で服薬を勧めても返事は良いが服用しません 元日から5日まで訪問できず 6日の昼に服用させましたが 8日の訪問まで服用していませんでした 服用しないと病状が現れ 本人の表現ですと「アトア、アトア、アトア」と幻聴があり顎がひきつるらしく本人も苦痛だそうで 服用を勧めるときは 『アトア』が始まると困るでしょうと 説明して勧めますが そのときだけで服用が継続出来ませんので先生と相談してセレネースと同じ効用の注射を1月12日に受け 飲み薬と併用をして様子を見る事にしています。

また最近になって 気がついた事ですが 排尿をバケツにしたり 排便を洗面器にしたりしていましたので排せつはトイレでするように注意をしましたが  今のところ守っていますが 継続して守られるかどうか不安です。縁者の叔母にあたる方に聞きますと母親の生前から同様の排せつを容認しており長い間の習慣となっている恐れがありますのでくりかえし 排せつはトイレで行うよう説得しかないと思っています。
訪問時の行動しか分かりませんが ベッドに入るダイニングキッチンでたばこを吸う TVを見る 買い物に行く 食べる を思いつつままに行動して 同じ事を長時間継続できない。ケアセンターの人から 介護勤務中の10時から2時間は在宅要請があり、従兄弟に 2時間は外出しないよう話して 理解した様子でしたが、都度在宅するよう話し掛ける必要がありそうです。
掃除や片付けはケアセンターの人と一緒に 食べものの容器やみかんの皮や包装ビニル袋などが散らかし放題のところを一緒に手伝いを誘い具体的に作業で 鼻をかんだティッシュペーパーをゴミ箱に入れる作業を頼んだときは実行するが 1分の持続もできないので、ねばり強く繰り返して持続できるよう仕向ける必要があります。
風呂 洗顔 永年入浴せず洗顔もしていない状態が 続いています。 年末に 足湯をして爪を切りましたが たいそう気持ちが良い様でしたのでついでに 手も温浴して爪を切りましたが 自分で 手の垢を落として気持ちが良いと言っていました 機会を見て 入浴の気持ち良さを経験させたいと思っています。 気持ちの良い体験を重ねれば 入浴洗顔が自分で出来る可能性の有る様に願っています。
毎週木曜日の朝に指定の場所に 家庭ゴミを出す決りで 従兄弟にゴミを出すのを頼んできちんとゴミ出しをする事もありますが出していない事が大半です これも繰り返して習慣にならないかと願っています。

今後の対応に付いてお尋ねします。主治医のお話では従兄弟の状態が長期的には一人で暮らすことが困難と考えるので専門病院が併設された施設への入所が必要だとのご意見をいただきましたが 私は従兄弟の自立の可能性を捨てきれず 当面は訪問介護や訪問看護の手段をとりながら自立支援で生活作業の練習を行いつつ状態を観察しながら支援の内容を修正をしていく考えですが、従兄弟の家まで高速道路を使っても1時間半かかり私の年令(67才)を考えると数年で体力の限界になりそうですので市の障害者支援の制度や後見人制度の準備も始め 地域の民生委員のお世話もお願いし隣保の方にも状況をご説明してご理解を頂いていますが、異常行動が起きてからでは遅いので グループホームなどの施設へ入所を準備すべきかどうか迷っています。迷いの理由は次の2つです。
1自立の可能性を見極めたいのですが 方法があるのでしょうか。
2施設に入所して従兄弟の個性が尊重できて、自立の助けになるのでしょうかよろしくお願いを申し上げます。


林: 統合失調症のうちの一部は、適切な治療を続けていても、人格が荒廃していきます。それは高等感情の鈍麻、無為自閉、人格水準の低下、などと表現されますが、この【1437】はその一つの典型例の描写になっています。

私は従兄弟の自立の可能性を捨てきれず

そのお気持ちは理解できますし、また、常に自立の可能性を追求することはとても大切ですが、この【1437】のケースでは、症状と年齢からみて、改善はほとんど期待できない、または、期待できたとしてもごくわずかだと思います。現実的には、自立の可能性はないと見るべきでしょう。

主治医のお話では従兄弟の状態が長期的には一人で暮らすことが困難と考えるので専門病院が併設された施設への入所が必要だとのご意見をいただきました

このご意見に異論はありません。長期的な入所という方向で考えるのが現実的だと思います。残念ながらこれは、経過の悪い統合失調症の典型例です。


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